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知的生産の技術

感じたこと

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内容

  • 人間の生産活動には、いろいろの種類のものがある。たとえば、肉体労働によって物質やエネルギーを生産する。ところが、知的活動というものは、もしなにかを生産しているとすれば、それはいつも情報を生産しているのである。その情報が、物質やエネルギーの生産に役だつものであるにせよ、とにかく第一次的に知的活動の結果として生産されるのは、情報である。
  • わたしたちが「手帳」にかいたのは、「発見」である。毎日の経験のなかで、なにかの意味で、これはおもしろいとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。それも、心おぼえのために、みじかい単語やフレーズをかいておくというのではなく、ちゃんとした文章でかくのである。
  • わたしは、なるだけ記憶をたよりにしないようにしている。なかには記憶力のすぐれたひともいるけれど、だいたいにおいて人間の記憶はあてにならない。記憶をたよりに知的作業をすすめようとするひとを、わたしはあんまり信用していない。
  • だいじなことは、カードをかく習慣を身につけることである。どうしたら、その習慣が身につくか。根気よくつとめるほかはないのだが、たとえば、つぎのような方法はどうだろうか。それは、おもいきってカードを一万枚くらい発注するのである。一万枚のカードを目のまえにつみあげたら、もうあとへひくわけにはゆくまい。覚悟もきまるし、闘志もわくというものだ。
  • 整理や事務のシステムをととのえるのは、「時間」がほしいからでなく、生活の「秩序としずけさ」がほしいからである。 水がながれてゆくとき、水路にいろいろなでっぱりがたくさんでている。水はそれにぶつかり、そこにウズマキがおこる。水全体がごうごうと音をたててながれ、泡だち、波うち、渦をまいてながれてゆく。こういう状態が、いわゆる乱流の状態である。ところが、障害物がなにもない場合には、大量の水が高速度でうごいても、音ひとつしない。みていても、水はうごいているかどうかさえ、はっきりわからない。この状態が、いわゆる層流の状態である。 知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといってよいだろう。精神の層流状態を確保する技術だといってもよい。努力によってえられるものは、精神の安静。

引用メモ