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無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争

感じたこと

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内容

そこで本書だ。最新鋭の無人兵器の解説を読むだけでもワクワクするが、技術力だけでなく大切なのはその運用方法を含めた政治的な議論である。その点も本書は抜かりなく、だからこそ現状の決定版と言える。

まずは無人・AI搭載兵器の現状について。今の戦場は、当たり前のように無人兵器が使用され、各国が開発し他国に販売もしている。例えばイスラエルが開発したハーピー無人機は、広範囲の索敵能力を持ち、ターゲットとなる敵のレーダー等を発見した際には自立的にに攻撃して破壊する。

いやもうそれ、戦争時には敵国に飛ばして敵兵士や兵器を攻撃しまくれば無敵の兵器じゃん?怖すぎない?と表面だけをみれば思ってしまうが、戦争とはそう簡単なものではない。無人兵器ならではの課題があるのだ。

戦場での敵兵士と味方兵士と民間人の判別、敵通信網に干渉され無人兵器のコントロールを奪われるリスクなど、現状の無人兵器に搭載されているAI技術の限界がどこまでなのかを詳しく紐解くことにより、今の戦場で起きている技術的な革新とその課題を解説してくれるのが本書なのだ。

元軍人であった著者は自分の経験を元に、戦場における敵味方の判断はとても困難である理由などが詳しく解説され、つまりは現在のAI技術でも敵・味方・民間人の判別などはかなり難しいだろうと結論づけている。万が一誤って民間人をAI兵器が殺害してしまった場合、その責任の所在はどこにあるのか?AIが乗っ取られた場合は?様々な課題を掘り下げ、今後解決すべき点を浮き彫りにしていく。

最先端技術をふんだんに盛り込んだ兵器を開発するわけだから、アメリカなどの大国が世界をリードしているのかと思いきや、先に挙げたイスラエル製のハーピーしかり、IT技術のしっかりした中小国こそ無人兵器の開発では先端を行っているらしい。だからこそ、世界規模での兵器利用に関する議論は急を要するし、そのためには技術について理解した者たちが議論する必要もある。政治的な視点も含めたマクロレベルの課題について包括的に学べる一冊。やはり決定版だ。

引用メモ