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職業としての小説家

感じたこと

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内容

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引用メモ

ジェームズ・ジョイスは「イマジネーションとは記憶のことだ」と実に簡潔に言い切っています。そしてその通りだろうと僕も思います。ジェームズ・ジョイスは実に正しい。イマジネーションというのはまさに、脈絡を書いた断片的な記憶のコンビネーションのことなのです。あるいは語義的に矛盾した表現に聞こえるかも知れませんが、「有効に組み合わされた脈絡のない記憶」は、それ自体の直感を持ち、予見性を持つようになります。そしてそれこそが正しい物語の動力となるべきものです。
それはどのような細部か?「あれっ」と思うような、具体的に興味深い細部です。出来れば上手く説明がつかないことの方がいい。理屈と合わなかったり、筋が微妙に食い違っていたり、何かしら首をかしげたくなったり、ミステリアスだったりしたら言うことはありません。そういうものを採集し、簡単なラベル(日付、場所、状況)みたいなものを貼り付けて、頭の中に保管しておきます。言うなれば、そこにある個人的なキャビネットの抽斗にしまっておくわけです。
それは、なんと言えばいいのか、一つの掲示のような出来事でした。英語にエピファニー(epiphany)という言葉があります。日本語に訳せば「本質の突然の顕現」「直感的な真実の把握」というようなむずかしいことになります。平たく言えば、「ある日突然何かが目の前にさっと現れて、それによって物事の様相が一変してしまう」という感じです。