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華氏451度〔新訳版〕

感じたこと

  • 戦ぐ、そよぐ、ってこう書くんだ。
  • ファイアマンの言葉遊び。逆になる言葉って何があるだろう。GPTと壁打ちしたいな。
  • ゆっくり考えるための本。
  • 幸福はゆっくりした時間の中にのみある。充実も同じ。短い中には興奮と快楽がある。
  • 何が幸福を溶かしたのだろうか?
  • 本を読むことは他人に興味を持つこと。他人に興味を持たせないために本を燃やす。さて、自己啓発本ばかりが売れる時代の意味とは?
  • クラリス、ルパンの名前だ。どんな関係があるんだろう。カリオストロの城。
  • 歴史は簡単に改変されるなぁ
  • 「私には関係ない」の射程は長い。
  • お喋りをする空間の意味。
  • 本は容器。本日は3つ。情報の本質と特性。余暇、つまり考える時間。最後は行動につなげるための正当な理由。
  • クイズ番組を一時停止して楽しんでいる人はいるだろうか。
  • この世界に冗談とユーモアは残るんだろうか。
  • 輪読の授業、楽しかったな。
  • 見た目で大統領を選ぶ感じ、いまだねぇ。しかしトランプ…
  • ペルシャの詩は、文字も音も美しい。暗誦でなくシーン。
  • ベイティの挑発と教授の遠隔音声、しばしば脳内で起きるやつだ。葛藤。
  • たくさんハイライト。いい本だった

内容

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引用メモ

あるかなきかの 戦ぎを聞きつけていた。
オレンジ色のハイライト | 位置: 102 灰になるまで焼け、そのまた灰を焼け。ぼくらの公式スローガンさ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 103 遠いむかしファイアマンっていうと、火をつけるんじゃなくて火を消すのが仕事だったんですって。そんなこと聞いたけど、ほんとうなの?」
オレンジ色のハイライト | 位置: 122 はずれの野原に立ってる長さ二百フィートの看板、見たことがあって? むかし看板は二十フィートしかなかったって知ってる? だけど車がどんどん速く走るようになったので、意味がはっきりわかるように長さを伸ばしたっていうわ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 166 笑みが薄れてゆくのがわかった。獣脂の肌そこのけに溶けて、垂れて、折り重なり、あまりにも長く燃えつづけた途方もないロウソクのように崩れ果て、消えた。暗闇。おれは幸福じゃない。幸福じゃない。いくたびもくりかえす。これが目下のほんとうの心境だと気づいた。少女は彼がかぶっていた幸福の仮面を奪って芝生を駆け去ったが、いまさら彼女の家の玄関をノックして、返せというわけにもいかない。
オレンジ色のハイライト | 位置: 355 昨夜 わたしが月の話をしたら、あなたは月を見たわ。ほかの人たちは決して見ないの。わたしが話しているのに、みんな行ってしまう。でなければ、わたしを叱りつける。みんな他人にかまっている時間なんかないのね。あなたはわたしの話をちゃんと聞いてくれた何人かのうちのひとりよ。だから、なぜ昇火士をやっているのか不思議でしょうがないの。あなたらしくない職業だもの」
オレンジ色のハイライト | 位置: 418 「悲しいですね」モンターグはひっそりと。「あれに組み込んでいるのは、《探す・見つける・殺す》だけなんでしょう。それしか知らずに一生を終えるなんてひどい話だ」  隊長のベイティーはおだやかに鼻を鳴らした。「くだらんね。あの機械はみごとな職人技の結晶だぞ。標的を知って動いて、命中率百パーセントのライフルだ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 457 一日が終わるころには、みんなもうへとへとで、あとはベッドへ直行か、ファンパークへ行ってまわりじゅうにあたりちらすか、ウインドー粉砕場でガラスを割るか、レッカーランドへ行って、大きなスチール球で車をつぶすかしかないのよ。
オレンジ色のハイライト | 位置: 539 「そりゃ笑える!」ストーンマンとブラックがそろって服務規定書を取りだした。これにはアメリカ昇火士の略史が記されており、見慣れたものながら、二人はモンターグに見えるよう目の前に広げてみせた。    創立一七九〇年。植民地各地において英国の影響下に著わされた書籍の焼却を目的とす。昇火士の 嚆矢 ベンジャミン・フランクリン。      規定1 通報を受けたるときは速やかに行動せよ。        2 昇火は迅速なるを要す。        3 一点も残さず焼却せよ。        4 終了後はただちに帰還することを要す。        5 つぎの通報にそなえて待機せよ。
オレンジ色のハイライト | 位置: 781 ミルドレッドが鼻歌機嫌で入ってきた。驚いている。「大変、どうしたの?」  彼は動転してフロアを見つめた。「年配の女性をひとり、本といっしょに焼いてしまったんだ」 「洗浄のきく敷物でよかった」彼女はモップをもってきて始末をした。「昨夜はヘレンのところへ行ってきたの」
オレンジ色のハイライト | 位置: 815 「ただ女が死んだわけじゃないんだ。この十年ぼくが使ってきたケロシンのことを考えたよ。それから本のことも考えてみた。そこではじめて本のうしろには、かならず人間がいるって気がついたんだ。本を書くためには、ものを考えなくちゃならない。考えたことを紙に書き写すには長い時間がかかる。ところが、ぼくはいままでそんなことはぜんぜん考えていなかった」彼はベッドから降りた。 「人が世の中や人生をながめて、考えたことのいくらかを紙に写すのに一生かかっても、ぼくがたった二分で駆けつけて、ドカーン! おしまいだ」 「わたしは関係ないわ」とミルドレッド。「なにもしていないのよ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 865 ベイティーは宙に吹き上げた煙の模様に目をこらした。「十九世紀の人間を考えてみろ。馬や犬や荷車、みんなスローモーションだ。二十世紀にはいると、フィルムの速度が速くなる。本は短くなる。圧縮される。ダイジェスト、タブロイド。いっさいがっさいがギャグやあっというオチに縮められてしまう」
オレンジ色のハイライト | 位置: 872 つまり、いまもいったように『ハムレット』について世間で知られていることといえば、《古典を完全読破して時代に追いつこう》と 謳った本にある一ページのダイジェストがせいぜいだ。わかるか? 保育園から大学へ、そしてまた保育園へ逆もどり。これが過去五世紀かそれ以上もつづいてる知性のパターンなんだ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 908 「民衆により多くのスポーツを。団体精神を育み、面白さを追求しよう。そうすれば人間、ものを考える必要はなくなる。どうだ? スポーツ組織をつくれ、どんどんつくれ、スーパースーパースポーツ組織を。本にはもっとマンガを入れろ、もっと写真をはさめ。心が吸収する量はどんどん減る。せっかち族が増えてくる。ハイウェイはどこもかしこも車でいっぱい、みんなあっちやこっちやどこかをめざし、結局どこへも行き着かない。誰もかれもがガソリン難民だ。街はモーテルの集合と化し、人間は遊動民族となって潮の満ち干のままここからそこへと動き、お前がきょうの昼までいて、おれがその前の夜いた部屋に、今夜は自分が泊まるはめになる」
オレンジ色のハイライト | 位置: 960 「黒人は『ちびくろサンボ』を好まない。燃やしてしまえ。白人は『アンクル・トムの小屋』をよく思わない。燃やしてしまえ。誰かが煙草と肺がんの本を書いた? 煙草好きが泣いてるって? そんな本は燃やしてしまえ。平穏無事だ、モンターグ。平和だ、モンターグ。争いごとはそとでやれ。焼却炉で燃やしてしまえば、もっといい。葬式は悲しみをもたらすし、異教の匂いがする。ならばそれも燃やしてしまえ。人が死んだら五分後には、ヘリコプターで全国津々浦々どこへでも届けてもらえる火葬炉〝大炎管〟へ直行だ。十分後にはほんの少量の黒い塵になっている。故人を偲んでああだこうだいうのはよそう。忘れてしまえ。ぜんぶ燃やしてしまえ、なにもかも燃やしてしまえ。火は明るい。火は清潔だ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 977 学校の記録からすると、家族が潜在意識にいろいろ吹きこんでいたのはまちがいない。あの子は物事が どう 起こるかではなく、 なぜ 起こるかを知りたがっていた。これは厄介なことになりかねない。いろいろなことに、なぜ、どうしてと疑問を持ってばかりいると、しまいにはひどく不幸なことになる。気の毒だが、死んだほうがよかったんだ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 987 国民には記憶力コンテストでもあてがっておけばいい。ポップスの歌詞だの、州都の名前だの、アイオワの去年のトウモロコシ収穫量だのをどれだけ憶えているか、競わせておけばいいんだ。不燃性のデータをめいっぱい詰めこんでやれ、もう満腹だと感じるまで〝事実〟をぎっしり詰めこんでやれ。ただし国民が、自分はなんと 輝かしい 情報収集能力を持っていることか、と感じるような事実を詰めこむんだ。そうしておけば、みんな、自分の頭で考えているような気になる。動かなくても動いているような 感覚 が得られる。それでみんなしあわせになれる。なぜかというと、そういうたぐいの事実は変化しないからだ。哲学だの社会学だの、物事を関連づけて考えるような、つかみどころのないものは与えてはならない。そんなものを 齧ったら、待っているのは憂鬱だ。テレビ壁を分解して、またもとどおりにできる人間は、まあ、いまはおおかたの人間ができるわけだが、そういう人間は、計算尺と巻尺で宇宙を測って計算して方程式で示そうとする人間よりしあわせなんだ。
オレンジ色のハイライト | 位置: 1,347 書物は、われわれが忘れるのではないかと危惧する大量のものを蓄えておく容器のひとつのかたちにすぎん。書物には魔術的なところなど 微塵 もない。魔術は、書物が語る内容にのみ存在する。書物がいかに世界の断片を継ぎあわせて一着の衣服に仕立てあげたか、そこにこそ魔術は存在する。
オレンジ色のハイライト | 位置: 1,380 テレビは人を望みどおりのかたちに育てあげてしまう! この世界とおなじくらい現実的な環境なのだよ。真実になり、真実として 存在 してしまう。本は分別をもって叩きのめすことができる。しかし、わたしの全知識と懐疑主義をもってしても、百人編成のオーケストラだの総天然色だの三次元だのを相手に論じあえたためしがない。あの信じがたいほどすばらしいラウンジに入り、その一部になると議論することなどかなわない。
オレンジ色のハイライト | 位置: 1,415 ふつうの人間がさがしものの九十九パーセントを見いだすのは本のなかだ。かならず、という保証を求めてはいかん。ひとつのもの、ひとりの人間、ひとつの機械、ひとつの図書館に救われることを期待してはならんのだ。ささやかでも、救いに向けて自分のできることをしなさい。そうすれば、たとえ溺れようとも、少なくとも岸に向かっていると自覚して死んでいける」
オレンジ色のハイライト | 位置: 1,622 「野党はなんであんな人を候補にしたのかしら? 背の高い相手に、あんな背の低い人をかつぎだすなんてねえ。それに──あの人、もごもごしゃべるし。話の半分は聞きとれなかったもの。おまけに聞こえたところは、わけがわからなかった!」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,048  泣きながら、モンターグはそう確信した。ベイティーは死にたがっていた。あいつはただあそこに突っ立っていた、本気で身をまもろうともせず、突っ立って、ジョークを飛ばし、チクチクとおれをつついていた。そう思うと、むせび泣きが途切れ、ひと息つく余裕が生まれた。おかしな話だ、おかしいじゃないか、いくら死にたいからって、武器を持った男を勝手に歩きまわらせて、口をつぐんで生きのびようとするかわりに相手に罵声を浴びせ、からかって、怒り狂わせ、ついには……
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,213 「まったく、おかしなことだと思わんか?」老人はいった。「個人的な問題をかかえておると、戦争といわれても余所事にしか思えんのだから」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,372  太陽は毎日、燃えている。太陽は〝時間〟を燃やしている。世界は円を描いて猛進し、軸回転し、時間は年月と人びとを燃やすのに忙しい。おれがなんの手助けもしなくとも、その営みはつづく。だからおれがほかの昇火士といっしょになってものを燃やし、太陽が〝時間〟を燃やしていたら、 なにもかも が燃えることになってしまうではないか!
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,606 ひとりひとり召集して、知っている内容を暗唱してもらうんだ。そしてそれをタイプする。その作業をつづけても、もしふたたび〝暗黒時代〟がやってきたら、またおなじことを最初からくりかえさねばならんだろう。しかし、そこが人間のすばらしいところだ。重要で、やる 価値 があると心底納得していれば、いくら勇気をくじかれようと、うんざりしようと、あきらめずに、もう一度最初からくりかえせるんだ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,633 モンターグは歩きながら、横目でひとりひとりの顔をちらちらと盗み見ていた。 「本を表紙で判断してはいかんぞ」と誰かがいった。  全員が静かに笑い、下流への旅はつづいた。
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,663 グレンジャーも、モンターグとともにうしろをふりかえっている。「人は死ぬとき、なにかを残していかねばならない、と祖父はいっていた。子どもでも、本でも、絵でも、家でも、自作の塀でも、手づくりの靴でもいい。草花を植えた庭でもいい。なにか、死んだときに魂の行き場所になるような、なんらかのかたちで手をかけたものを残すのだ。そうすれば、誰かがお前が植えた樹や花を見れば、お前はそこにいることになる。なにをしてもいい、と祖父はいっていたな。お前が手をふれる前の姿とはちがうものに、お前が手を放したあともお前らしさが残っているものに変えることができれば、なにをしてもいいと。ただ芝を刈るだけの人間と、庭師とのちがいは、ものにどうふれるかのちがいだ、ともいっていた。芝を刈るだけの人間はそこにいないも同然だが、庭師は終生、そこに存在する、とね」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,683 祖父は彫刻家だった。〝ローマの〈ステータス・クオ〉というやつは好かん! 現状維持ではいかん!〟と、ある日、わたしにいったんだ。〝目には不思議なもの、びっくりするようなものを詰めこめ。十秒後には死んでしまうつもりで生きろ。世界を見ろ。世界は、工場でつくった夢、金を出して買う夢よりずっと幻想的だぞ。保証だの安全だのを欲しがるな。世のなかにそんな動物はいない。まあ、いるとしたらナマケモノのたぐいだが。年がら年じゅう、日がな一日、樹の枝からさかさまにぶらさがって、寝るだけで一生を終えるやつだ。そんなものはクソ喰らえ。樹をゆすって、落っことしてやればいいんだ〟とね」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,784 「昔、キリストより前の時代だが、不死鳥という愚かな鳥がいた。その鳥は数百年ごとに薪を積み上げて、自分を火葬にしていたそうだ。きっと人類のじつのいとこだったにちがいない。ところがその鳥は、自分を焼くたびに灰のなかから飛びだしてくる。まったくおなじ姿で、ふたたび生まれてくるんだ。われわれも似たようなもので、おなじことを何度も何度もくりかえしているが、われわれにはひとつ、不死鳥が持ちえなかった美点がある。われわれは、自分がいまどんな愚行を演じたか知っているという点だ。われわれは過去一千年のあいだにどんな愚行を重ねてきたか知っているのだから、それをつねに心に留めておけば、いつかは火葬用の積み薪をつくって、そのなかに飛びこむなどという行為を止めることができるはずだ。愚行を記憶している人間をもう少し集めるとしよう。全世代、そろえたいな」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,798 彼らに、なにをしているのかとたずねられたら、こう答えればいい。われわれは記憶しているのだ、と。長い目で見れば、それがけっきょくは勝利につながることになる。そしていつの日か、充分な量を記憶したら、史上最大のとてつもなく巨大な蒸気ショベルをつくって史上最大の墓穴を掘り、そこに戦争を放りこんで埋めてしまうんだ。さあ、まずは鏡工場をつくって、来年は鏡だけを生産するぞ。そしてじっくりのぞきこむんだ」
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,911 三月なかばになってようやく犯人の男が逮捕され、思想的背景のない単独犯とわかるが、それに先立つ二月二十六日、朝日新聞の天声人語に長田弘氏の詩「ベルリンの本のない図書館」が紹介された。誰もはいれない地下にある方形の部屋を語った詩だ。ベルリンはベーベル広場。その石畳の中央に地下をのぞきこめる一画がある。観光客はきまってそこへ立ち寄るが、内部には白い本棚がむなしく並んでいるだけで、人びとははめこまれたガラスの奥を数秒見下ろすだけで興味を失い、去ってゆく。  一九三三年五月十日、ゲッベルスの宣伝に乗ったドイツ学生連合会は、ドイツ語とドイツ文学の純化を目標に、フロイト、ケストナー、ハイネ、マルクスなど二万点にのぼる〝非ドイツ的な〟本をその広場で灰にした──図書館は、そうした本の受難を記憶にとどめるためにつくられた。本棚には、焼かれた二万冊分の本をおさめるだけのスペースが確保されているという。
オレンジ色のハイライト | 位置: 2,943 一八九五年ドイツ生まれのこの 御仁、生国での苗字はヴェルトハイマー(Wertheimer)といい、一九二二年渡米、結婚とともにワーサムと改姓した。その彼がニューヨークのハーレム地区で非行少年の調査をはじめたところ、少年たちがみんなコミックブックの熱心な読者であることを知り、悪の元凶はコミックブックにありと断定したのである。短絡もいいところだが、サンプルとしてのっているホラーコミックの一コマを見ると、人間の頭部をボール代わりに使う野球のシーンなど、たしかに肉食を好む人種が描きそうなリアルな絵柄で、ひと目見たとたんウグッとくる。五〇年代はじめ、議会による調査の席でワーサムは、「ヒトラーは素人ですな、コミックブック産業に比べたら」とまで言い放ち、アメリカ各地ではじまっていたコミックブック焚書の勢いをさらにあおることになった。
オレンジ色のハイライト | 位置: 3,006 察しの通りで、未来世界を描くためには、わたしは大変なスピードで書かなければならない。でないと、未来は立ち止まってはくれないぞと思ったのだった」(拙訳)
オレンジ色のハイライト | 位置: 3,038  対談によれば、そのときヘフナーがブラッドベリに支払った原稿料は四百五十ドル。再録扱いにしても破格の安値だが、これがヘフナーの財布から出るぎりぎりの金額だったという。英語の常套句でいえば、The rest is history.(あとは歴史である)。プレイボーイは大成功をおさめ、ぼくがアメリカへ行くようになった七〇年代なかば、ニューススタンドに寄れば、その亜流雑誌が乱立していた。ブラッドベリ曰く、「というわけで、ベッドの下にプレイボーイを山と積んでいる若い男性諸君に教えておくと、あの山を置いたのはわたしなんだ」